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東亜工機株式会社 範師 井手 義博さん
    「どんなに機械が進歩して作業が自動化しても、結局は人の目と手、そしてアイデアがないとモノは作れません」

      広々とした工場内に規則的に並ぶ、直径1メートル、長さ3メートル以上はありそうな巨大な鋳鉄製の筒。「シリンダ・ライナ」と呼ばれる聞き慣れないこの部品は、船舶用ディーゼルエンジンに使われている大型の燃焼筒だ。鹿島市に3つの工場を構える東亜工業株式会社は、シリンダ・ライナの世界シェア約40%を占める世界的企業。同社で40年以上にわたって旋盤加工に従事し、旋盤技術と品質の向上に努めてきた井手義博さんが、厚生労働省が発表した今年の「卓越した技能者(現代の名工)」に選ばれた。優れた技術を必要とするドリルでの深穴加工や、科学技術庁官賞にも選ばれた罫書き治具の開発といった実績を評価されての受賞だ。
      現在は製造の現場を退き、改善推進室の一員として、工場全体のさらなる作業の効率化と商品の品質向上、そして後進の育成に日々努めている。
    「今回の受賞は、今まで色々なことに挑戦させて、勉強させてくれた会社、そして、これまで私を育ててくれた先輩や一緒に仕事をしてきた同僚たちのおかげです」と謙虚に語る井手さん。技術者としての半生を懐かしそうに振り返る瞳には、優しく温かな光が宿っていた。
      井手さんは昭和24年、塩田町に生まれる。塩田工業高校を卒業後、昭和43年、東亜工機に入社。機械課員として主にシリンダ・ライナの旋盤加工に従事する。「仕事がもっと効率的にできないか、工夫することが好き」という井手さんは、加工箇所を効率的に書き入れる「罫書き治具」や深穴加工用ドリルの仕上がりを検査する「リップハイト計測器」など、持ち前の探求心と創造力で次々と新技術を生み出していった。官学連携の気運が高まっていた昭和60年には、長崎県佐世保高専に研修生として赴き、シリンダ・ライナの品質向上のために必要な深穴加工技術を共同研究する。研究の成果を製造の現場へとフィードバックさせ、さらなる加工技術の向上と製品の品質向上を実現した井手さんは、機械工場の中心技術者として社内外から高い評価を受けた。そして平成16年、工場全体の作業効率化と品質向上を監督する改善推進室へ異動。18年には鋳造部門・機械部門から各1名ずつしか選ばれない技能者の最高峰「範師」に認定され、現在もその技術を次代へと伝えるべく後進の育成に力を注いでいる。
    「現場で問題が発生しても、私は頭ごなしに指導したり、簡単に解決策を与えたりはしません。問題にみんなで一緒に向き合い、それぞれがどのような考えを持っているかを話させ、そこから解決の糸口を見つけたいと思っています。やはり会社は『人』が大切。どんなに機械が進歩して作業が自動化しても、結局は人の目と手、そしてアイデアがないとモノは作れませんから。若い技術者には、与えられるものを待っているだけではなく、色々なことに挑戦してチャンスをつかみ、新しい物を生み出してほしいですね」
     その高い技術と創造力を評価され、栄誉ある賞を受けた井手さん。だが、社内品質の向上と後進の育成を目指す彼の仕事に、明確なゴールは存在しない。
    「耐久性・耐摩耗性を上げ、製品の質をさらに上げていくのが私達の目標ですが、加工する素材の質が上がれば、それに比例して加工作業は難しくなります。より良い商品を生み出すために、まだまだ『改善』することはたくさんありますよ」
     そう言って笑う井手さんの顔は、技術者としての誇りに満ちて輝いていた。









プロフィール
 昭和24年、塩田町生まれ。塩田工業高校卒業後、昭和43年、東亜工機株式会社入社。主に機械工場での旋盤作業に従事し、昭和60年に佐世保高専で深穴加工技術を共同研究。昭和61年、罫書き治具の開発で科学技術庁官賞を受賞。平成16年に改善推進室へ異動、18年に同社の「範師」に認定。今年11月、「現代の名工」に認定される。
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