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佐賀市片田江の交差点そばにある小さなバー。中に入ると、心地よいジャズの調べが流れる静かな雰囲気が漂う。ボトルの横には昔懐かしいレコードがずらり。正面には大型プロジェクターがかけられ、ジャズ音楽の演奏風景が映し出されている。
ここ、『ロンド』は、昭和32年のオープン以来、音楽好きのお客の夜の憩いの場として親しまれている、ジャズ・バーの老舗的存在だ。
「酒が好きだという単純な理由で店を始めて、音楽が好きだったからレコードをかけて…。気がついたらもうこんなに年月が経っていたんですね」と穏やかに話すマスターの池田之一さんは、今年で64歳になる。
店を始めた当初は、流行のスタンドバー形式。BGMにはラジオから流れてくる音楽を何気なくかけていた。そのうち、音楽に興味を持ち始めた池田さんは、レコードを通信販売で東京から取り寄せ、お客に聞かせるようになる。この頃、佐賀でレコードといえば、非常に貴重な存在で、初めてレコードの音を耳にするお客も少なくなかったのだそう。昭和40年頃になると、ますます音楽の虜となった池田さんは佐賀で初めてジャズ喫茶&バーを始める。音楽好きのお客にとって昼も夜も音楽三昧の店は格好のたまり場。時折ライヴも行い、当時の佐賀の繁華街を盛り上げる一役も担っていた。
「サラリーマンが性に合わず、始めたものですから、自分のやりたいようにできるということが楽しかったですね。今はもう体力も続きませんけど、少し前までは休むのもイヤで、年中無休でやっていましたから。」
平成元年に今の場所に移転。時代の変遷もあって、夜のみの営業となったが、これまでに集めた二、〇〇〇枚のレコードやCDが今も変わらずお客を楽しませている。
「好きだったから、ずっと続けてこれた」と池田さんは言う。しかし、お客はこう答える。「ここへ来るのは、音楽が好きなだけじゃない。池田さんがよくしてくれるからだよ。お客の話を親身になって聞いてくれる、あの穏やかな人柄が『ロンド』をこれまで続けさせているんじゃないかなあ。」
音楽のリズムに合わせるように、池田さんのカクテルシェイクの音が鳴り響く。お客の前にそっと置いた淡いピンクのカクテルは、酒と音楽、そしてお客を愛する池田さんの心の色のように思えた。
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