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連載 第25回 佐賀の発電所から見たエネルギー資源
玄海原発再稼働審査の盲点(上)

執筆者

中西正之 Nakanishi Masayuki 経歴/昭和18年生まれ。元燃焼炉設計技術者。「即時原発ゼロの設計図」で講演を行っている。



原子力規制委員会、原発再稼動審査の終了前に公聴会や意見公募を行う方針発表
 今年の2月13日田中委員長は、審査の過程で、科学技術的な面での意見募集や公聴会を実施する方針を発表しました。 公聴会や意見公募は科学的・技術的な問題に限ると説明しています。玄海原発の再稼動審査が終了すれば、九州電力や政府は、原発の再稼動を進めると思われます。
私たちは、今から公聴会や意見公募に科学的・技術的な意見を述べるための注目が必要に思われます。そこで昨年7月8日に策定された新規制基準の問題と、 新規制基準適合性に係わる審査で判明した問題を2回(上、下)に分けて説明します。
A.免震重要棟設置の5年間猶予を認めた

   
図1
【図1】免震重要棟

 福島第一原発の過酷事故の発生時、新潟県中越沖地震での教訓から、緊急時の対策および通信・電源などの重要設備を集合させた「免震重要棟」 (図1)を建設していたのでチェルノブイリまでの事故になりませんでした。
 免震重要棟が地震で破損されなくて、免震重要棟と原発への連絡、免震重要棟と東電本社・首相官邸への通信ができ、 免震重要棟内部の放射能除去対策が機能していたために、必死の過酷事故対策が行われましたが、免震重要棟がなければ過酷事故対策は混乱していたはずです。
 免震重要棟は原発の再稼動を行う為には、絶対に必要な設備です。
 しかし、原子力規制委員会は、原発の再稼動を急ぐために、建設費用と建設時間のかかる免震重要棟設備の設置に5年間の猶予を認めました。

 玄海原発3・4号機に免震重要棟が無くて再稼動し、免震重要棟の設置前に大事故が起きたらどうするのでしょうか。
B.フィルター付ベント設置の5年間猶予を認めた
 大事故が起こった東京電力の福島第一発電所の原子炉には、ベント(注)と高層煙突のような排気塔が付いていました(図2)。 ベントラインにはフィルターは付いていませんでしたが、ベントを行うときには、水蒸気を水の中に潜らせて、 排ガス中の放射性物質を有る程度除去しました。福島第一原発の1・3号機はベントができたので、格納容器の破裂は免れました。 2号機は電源喪失により、最後までベントができずに、格納容器の一部が破裂して、格納容器内の高濃度の放射性物質を含む大量の水蒸気が原子炉建屋から 放出されました。
 原子力規制委員会は、玄海原発3・4号機は福島原発の沸騰水型の原子炉とは別の設計の加圧水型の炉であり、格納容器の大きさが約8倍あり、 過酷事故の発生時格納容器の破裂までには幾らか余裕があるという理由で、フィルター付ベント設置に5年間の猶予を認めました。
 はじめからベントという減圧装置を持っていない玄海原発3・4号を再稼動して、フィルター付ベントの設置前に大事故が起きて、 格納容器が爆発したらどうするでしょうか。

  図2
 【図2】福島第一原発のベント 

C.玄海原発3・4号機には鋼鉄製の格納容器も原子炉建屋も無く、コンクリート製の格納容器だけなのに、規制をしなかった。
 近年原子力発電所が大型化してきましたが、発電能力の割にはその建設費が高くなってきたので、鋼鉄製の格納容器と原子炉建屋一体化して、 プレストレスコンクリートの格納容器にし、建設費が非常に安価な新型原子炉ができました。それが、玄海原発3・4号機(と大飯原発3・4号機)です。
 もともと日本の原発は鋼鉄製の格納容器と原子炉建屋で原子炉圧力容器を二重に保護してきました。(図3) ヨーロッパの規制基準も二重の保護の無い原子炉の設置を認めていません。
 しかし、玄海原発3・4号機と大飯原発3・4号機は全く同じ設計ですが、これらは、コンクリート製の格納容器だけで一重の保護機能しかないが、 日本の旧基準でみとめられてきました。(図4)
 玄海原発3・4号機(1994年稼動・1997年稼動)は稼動を始めましたが、新型の炉の設計が何処まで有効かを確認するために、 サンディア研究所の加圧水型1/4モデルの破壊試験(2001年日本とアメリカの共同研究)が行われました。 その結果コンクリート製の格納容器は14気圧と意外に低い圧力でばらばらに破損する事が分かりました(図5)(図6)。
 しかし、以前は過酷事故は起こらないものと考えられていたため、運転中の原子炉は一重製のコンクリート製格納容器でも使用が認められてきました。 福島第一原発で過酷事故が起こり原子力規制委員会は玄海原発でも過酷事故が起きる可能性があることが分った後でも、 玄海原発3・4号機のコンクリート製の格納容器の引き続いての使用を認めました。 福島第一原発は爆発により鉄筋コンクリートの原子炉建屋の上部は喪失したが、鋼鉄製の格納容器は少しの損傷だけで残ったので、 核燃料を有る程度封じこめる事ができました。
 玄海原発3・4号機のコンクリート製の格納容器が爆発したら、格納容器の無かったチェルノブイリーの過酷事故と同じになり、 核燃料を封じ込めるものが何もなくなるが、野ざらしになった核燃料からどのようにして住民を守るのでしょうか。

図3 図4
【図3】福島第一原発の格納容器と
原子炉建屋
【図4】大飯原発の格納容器

図5 図6
【図5】玄海の格納容器モデルの建設
(サンディア研究所のHPより)
【図6】玄海の格納容器モデルの
試験結果
(サンディア研究所のHPより)

D.新規制基準は過酷事故対策におけるCO(一酸化炭素)爆発対策が欠如している

   
【図7】福島第一原発3号機の爆発

 国会事故調査委員会は、3号機は(ジルコニウム・水反応)による水素爆発だけでは説明できず、コリウムコンクリート反応(MCCI)が大規模に起こり、 水素とCOが空気と反応し爆発したと考えるべきと指摘していました(図7)。
又、佐藤暁氏(元米国GE社原子力事業部に勤務)は新規制基準の骨子が発表されたとき、次のように指摘していました。
『実際には、原子炉から落下した溶融炉心がコンクリートと化学反応を起こし、水素ガスの他に大量の一酸化炭素も発生しうる。 かってはそのような知見も思慮も無かったため、コンクリートに入れる砂利の種類までは仕様として規定しておらず、定かではない。 実際の石灰石の混入量によっては、爆発防止対策設備の設計条件を見直す必要もある。』
 MCCIとは、冷却ができなくなり、2800℃の高温になって溶けた炉心の核燃料が原子炉圧力容器の底を溶かして、 下部のコンクリートの床に落下しコンクリートと反応し、コンクリートが溶ける現象です。その時大量の水素とCOが発生します。 COは水素と同じように爆発しますが、炭素が含まれるので酸素が少ない場合はオレンジがかった色の爆発をします。
 原子力規制委員会は過酷事故の発生時、MCCIにより大量の水素とCOが発生する事を見逃したので、新規制基準にはその対策を全く策定しませんでした。 そのために、(ジルコニウム・水反応)による水素爆発対策だけを行っている新規制基準では、格納容器の爆発防止が十分には出来ない状態になっています。 この新基準では安全は守られません。(岡本・中西・三好「炉心溶融物とコンクリートとの相互作用による水素爆発、CO爆発の可能性」岩波の科学2014年3月号 http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/)


26回に続く


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