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連載 第17回
原発の現実的な代替エネルギーを考える

執筆者

岡本 良治 Okamoto Ryouzi 経歴/九州工業大学名誉教授。原子核物理学専攻。... ≫詳細


原発再稼働を目指す動きとそれについての世論調査
 7月8日に施行された原子力規制委員会の新規制基準に対して、九州電力の川内原発1、2号機、玄海原発3、4号機などの審査が申請されました。 原発再稼動についての3つのマスコミの世論調査が7月15日に発表されました。朝日新聞では再稼働について反対56%、賛成28%です。原子力規制委員会の新規制基準を満たした原発の再稼動という前提で、毎日新聞では反対53%、賛成37%そして共同通信では反対50.6%、賛成40%です。
 今後の焦点の一つは、原発再稼働をめぐる動きですが、その内容にかかわらず、原発の数は全体として縮小する方向です。したがって、今後、原発に代わるエネルギーを、どのように確保するかが大きな課題となります。


現在、日本の電力はどんな電源からどんな割合から構成されていますか
 消費されるエネルギー全体の約44%が電力としての利用であることは、震災前後でほぼ同じです。 3.1以前、電力の約32%を原子力が占めていましたが、2013年現在、電力の約88%が石油・天然ガス・石炭の火力、原子力は約2%、残り約10%は再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーのうち、水力が約8%、残りは約2%にすぎません。 2012年7月から2013年2月間に新規参入した再生可能エネルギーは9割が、再生可能エネルギー普及促進のために電力会社買い取り価格を人為的に高く設定された太陽光発電であり、再生可能エネルギーの中で相対的に変換効率の高くコスト競争力が高い風力は伸び悩んでいます。さらに、実際の発電量は原発1機分強程度で、電力実績の1%前後と報道されています。


日本の再生可能エネルギーの資源量でいつまでにどれくらいの電力がつくれるでしょうか

 再生可能エネルギーは、自然環境への負荷が少ないこと、燃料費は基本的に不要であること、国産であることなどから、普及を拡大するべきことには誰も異論はないでしょう。
 再生可能エネルギーがどの程度の量を供給できるかについて、ここでは一つの参考として「環境省のある試算によると、風、地熱、太陽光など、再生可能エネルギーの潜在力は、日本全体で、震災前の電力量のおよそ5」という見方[1]を紹介します。 これが妥当な評価とすれば、日本は再生可能エネルギー資源が豊富で、長期的には希望が持てると考えてよいでしょう。
 しかし、時間軸がはっきり示されていないために、近々実現するのか、それとも遠い先のことかわからないという問題があります。さらに、再生可能エネルギーを社会的に大規模で導入する場合、コスト、面積あたりのエネルギー、稼働率、環境負荷の度合いなど総合的に考える必要があると筆者は考えます。


原発なしでも電力は、足りていますが、今何が問題になっていますか

 最近、火力発電焚き増し用の燃料費などで電力会社は赤字が増加し、経営不安に陥りつつあると報道されています。しかし、赤字の原因は火力発電焚き増し用の燃料費だけではなく、停止中の原発の維持管理費、新規制基準の審査に適合するための対策費用がかなりの金額になるとも言われています。しかし、紙面の余裕がないので議論できません。


蒸気とガスをともに利用するコンバインド・サイクル発電とその技術革新

 近年、新型の火力発電装置が開発され、商用運転されています。これをコンバインド・サイクル発電 (通称、CC発電)と言います。液化天然ガス(LNG)を用いて、ガスタービンも使うので、LNGCC発電、またはGTCC発電と表されることもあります。 CC発電を略図で示します。(四国電力ホームページ掲載の図などを参考に作図)
その仕組みは次の通りです。
①液化天然ガスを高温で燃焼させ、 ガスタービンを回して発電する。
②さらに、その排熱を利用して水を蒸気に変え、
③蒸気タービンを回転させて発電する。
④しかも、蒸気タービンは高圧・中圧・低圧 の三つあり、排熱を順々に三回も利用する。一粒で四度もおいしいと言えます。
(参考:火力発電と原子力発電ともに発電装置としてタービンを用いる点は同じです。しかし、次の違いがあります。まず火力のCC発電ではガスタービンも用いること。次に、専門書によれば、蒸気タービンでも蒸気条件の違いのために、原子力タービンは熱効率の点で火力タービンにも劣ります。)
熱機関の熱効率(熱を電気に換える割合)は温度を高くするほど良くなるので、より温度を高めた改良型CC発電(通称、ACC発電)や、さらに改良されたCC発電(通称、MACC発電)などが実用化されています[2]。しかし、ここでは広い意味で、CC発電と表します。
 2013年現在で熱効率は60%を超えています[2、3]。さらに、燃料電池の技術開発が進めば、熱効率はさらに上がると予想されています。対照的に、原発の熱効率は約35%で、残り約65%は排熱として、海水を暖めることになりますので、原発は海暖め装置でもあると言われます。






 ここで、高い熱効率をもつ火力発電に換えればどんなメリットがあるか数値で考えてみます。熱効率40%の旧型を熱効率60%の新型に換えると、相対的に50%効率アップになります。仮に、電源構成の約90%を占める火力発電の全てをより改良されたCC発電であるMACC発電に換えれば、燃料を約50%も節約できます。火力発電の一部はすでに、ACC発電、MACC発電に換わっているので、新型に換えることによる燃料節約の割合は少し減りますが、原発が震災前の電源構成中で占めていた割合約32%を超える効果があると言えるでしょう。 火力発電を新型に換えることで、電気料金を下げることもできるでしょう。


CC発電の高い効率以外の長所はありますか

 熱効率がよいことで、同じ電力量をつくるのであれば、CO2排出量が大幅に少なくなり、環境にかかる負荷が減ります。以下、川崎LNGCC発電所(電気出力42万kWの2機、計84万kW)を例にして説明します。更新費用は1機あたり250億円と建て替え費用は安いです。対照的に、九電・玄海原発3号機は建設費3993億円+立地交付金437億円=4430億円と言われています。また、敷地は約6万㎡(6ha)というコンパクトにできます。しかし、例えば、東北電力・女川原発は電気出力217.4万kWで、その敷地は170haです。さらに、建設期間は1~3年で原発と比べて格段に短いです。最後に、出力調節も容易で、約1時間で出力100%にすることができます。
 このような長所のため、人口集中地帯でも建てられるなど、送電ロスが非常に少なくできるだけではなく、CC発電は再生可能エネルギーが十分に普及していない段階でも補充調整電源として利用できます。ちなみに、佐賀県伊万里市長の塚部芳和氏もブログで、CC発電を普及させるメリットを強調しています[4]。


石炭ガス化CC発電の高いコスト・パフォーマンス

 石炭は世界各地に広く存在し、LNGに比べてもかなり安価であるために、現在でも国内外で大量に使用されています。しかし、地球温暖化防止の理由、特に、人為的なCO2増加を止めるという目的で、石炭は環境負荷が大きいのでは、という疑問を持つ人も少なくないでしょう。実は、石炭ガス化複合発電の技術革新も進行中です[5・6]。CO2分離と地下貯蔵の研究も始まっています。この技術革新により、これまで使えなかった中品位及び低品位の石炭も使えるようになります。また、ガス化石炭CC発電にはLNGも使えます。
 震災前後で、原発が約32%から2%に激減した分、火力のうち、石油火力は4%から19%に、LNG火力は33%から47%に急増しましたが、石炭火力は24%のままです。LNGに傾斜したことで、価格交渉の際に足元を見られ、価格が上昇した一因とも分析されています。従って、新型石炭火力への転換は価格交渉力を強め、火力発電の焚き増しの費用を大幅に減らせます。関連して、北九州市は安価で安定した電力供給のために、LNGと石炭が使える100万kW規模の大規模火力発電所と20~30万kW規模の洋上風力発電所などの建設計画を7月26日に発表しました[7]。
 以上のように、安全で安価で安定した、そして環境負荷を減らせる代替エネルギーが現在すでにあります。原発の再稼働が本当に必要かどうか、あなたはどう思いますか。


引用文献
[1].NHK時事公論 「海洋パワーと日本のエネルギー戦略」、2013年7月25日
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/162948.html#more
[2] ウィキペディア(フリー百科事典)、コンバインド・サイクル発電の項目。
[3] 朝日新聞、2013年7月24日夕刊。大型の火力発電所 空冷式使い内陸に。
[4] 塚部芳和伊万里市長のブログ。市長雑感(第343号)玄海原発と脱原発について。
[5] 読売新聞、2013年5月12日。石炭火力発電世界に誇れーガス化複合技術CO2削減で改善進む。
[6](株)常磐共同火力のホームページ。
http://www.ccpower.co.jp/data/igcc/about.html、http://www.ccpower.co.jp/data/igcc/dimension.html
[7]日経新聞、毎日新聞2013年7月27日。北九州市、巨大発電施設の構想。
民間事業者を誘致。(インターネット最終閲覧日2013年8月7日)

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