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連載 第15回
玄海原発と地震・活断層

執筆者

半田 駿 Handa Syun 経歴/京都大学理学部地球物理学科卒... ≫詳細


 福島第1原発の事故では、津波の被害が大きく取り上げられていますが、津波到達前にすでに地震の揺れにより、重大事故につながる配管等の損傷があったのではないかとの指摘があります。そうだとすると、原発の安全性を考える上で、津波だけでなく地震の影響も十分考慮する必要があります。ここでは、地震とその直接の原因となる活断層について述べたいと思います。 
地震とは
 地下に加わった力に耐えられなくなると、岩石の破壊が生じ地震が発生します。例えば割り箸に力を加えると「ボキ」と音がして折れますが、実はこのときに出る音(音波)と地震(正確には最初に到達するP波)は、同じものなのです。つまり、岩石が割れた時生じた音によって地面が揺れるのが地震なのです。音が遠くになるほど小さくなるように、地震の波も地中を伝わるうちに減衰してゆきます。従って、地震の揺れも、この大きさを段階表示したものが震度ですが、地震が発生した場所(震源)から遠くなるほど小さくなります。このように、震度は各地で異なりますが、地震の規模を表すマグニチュードは地震毎に一つしかありません。ちなみにこのマグニチュードが1異なると、エネルギーは約33倍の違いとなります。


海溝型地震と直下型地震
 ではこの岩石を破壊する力はどうして生じたのでしょうか。地球が十数枚の「岩盤」からなる板(プレート)で覆われており、このプレートがお互いに衝突したり、すれ違ったりすることで、地震や火山などの地学現象を説明しようとする考えをプレートテクトニクス理論といいます。これによれば、日本列島は4つのプレートがせめぎ合う、世界でも稀な場所です。
 3.11の巨大地震と津波は、東北沖の日本海溝で、日本列島(ユーラシアプレート)の下に太平洋プレートが沈み込むことにより生じたものです(図参照)。




太平洋プレートはユーラシアプレートを引きずるようにして沈み込むため、大きな力がかかるユーラシアプレートの先端部分は、周期的に破壊されます。また、先端の変形が破砕により上方に動いて元に戻るとき、その上の海水が持ち上げられ津波が発生します。このような地震を海溝型地震と呼んでいます。
 沈み込んだプレートは、同時に日本列島全体を歪ませます。この歪みに耐えきれなくなった所では、岩石が破壊され地震が発生します。このような地震を直下型と呼びます。阪神淡路大地震、福岡県西方沖地震がこの例です。このタイプの地震は、海溝型に比べるとマグニチュードは比較的小さいのですが、人口密集地の大都市近くで起こった場合は、震源に近いので甚大な被害が生じます。直下型地震は海溝近くで起きる海溝型と異なり、日本列島のどこでも生じる可能性があり、厄介な地震です。


地震と活断層
 阪神淡路大地震時には、地表に直線状の段差が現れました。このような地形を地震断層といいます。写真は、1891年の濃尾地震で現れた根尾谷断層です。道路が鉛直約6m、水平2mもずれた断層崖(だんそうがい)は有名で、世界中の地震の教科書に掲載されており、また国の特別天然記念物にも指定されています。阪神淡路大地震の断層(野島断層)では、断層上に建物を作り、北淡震災記念公園として公開されています。この建屋は展示だけではなく、断層崖の保護も目的としています。というのも降水量の多い日本では、このような地形は数100年も経てば浸食で平坦になってしまうからです。

根尾谷断層(白い点で囲んだ部分)。1893年のKoto論文の写真に加筆。


 ところで、2台のカメラで撮影した航空写真を用いると、地上を立体的に見ることができます。活断層とは、過去に繰り返し活動したか(その時当然地震が発生)、将来活動する可能性がある断層です。1回の地震で生じる断層の段差はせいぜい5m程度以下なので、降水による浸食の大きい日本で断層地形として何万年も残っているということは、地震がそこで何回も生じたことを意味しています。このことから、地形を判読することにより繰り返し活動した証拠である活断層が検出できます。先に、日本列島のどこで直下型の地震が生じてもおかしくないと言いましたが、正確には活断層に限られています。このことから地震予知にとって活断層の研究が重要なのです。
 しかし、航空写真による活断層の検出にも限界があります。都市部のように地形が改変されている場合、佐賀平野のように厚く土砂が堆積している地域などは、直線状の地形が隠されているため、この方法では困難です。例えば、福岡市内を北西|南東に走り、福岡西方沖地震との関連性が指摘されている警固(けご)断層も、都市化で地形が改変されたため確定的な証拠がなかったのですが、地下鉄工事で断層露頭が見つかり、その存在が確実になりました。
 活断層の長さは地震のマグニチュードと相関があるため、将来その断層で生じうる地震の規模を推定する手段として重要です。最近佐賀県内でもマグニチュード7.5クラスの地震が起こりうることが、地震調査研究推進本部から発表されました。これは東日本大地震の発生を受けて、各地の活断層の再評価を進めたところ、従来考えていた活断層がもっと長いことが分かったからです。


佐賀県の活断層分布
 九州の活断層分布をまとめたものが、九州活構造研究会(1989)から出版されています。図は、この結果を基にして佐賀県内の主要な18本の活断層、及び福岡県内の主要な断層である警固断層、水縄断層、西山断層(F1~3)を示したものです。12〜14は川久保断層系ですが、前述のように調査研究推進本部は、この断層系が従来以上に長いこと、またすぐ南に新たな活断層が存在することを指摘しています。
 図のAで示した断層(城下南断層)は、九州活構造研究会のリストにはない断層で、九州電力による玄海原発の耐震評価のための調査で新たに見つかったものです。この断層は浜玉町から、唐津湾を横切って対岸の東松浦半島の直前まで伸びています。その先の半島内では、リニアメントと呼ばれる直線的な地形(b)につながるように見えるのですが、これは九州電力の調査では活断層ではないとされています。筆者は昨年、VLF︲MT法という地下の電気抵抗分布を推定する方法で、このリニアメントを調査しましたが、その結果から、このリニアメントは活断層ではないかと考えています。その延長には名護屋断層(図の1)があり、これらを一連のものとすると、この断層で生じうる地震のマグニチュードは最大で7.2となります。
 本年4月に南淡路で生じた地震は、未知(未調査)の断層が原因でした。佐賀県内のほとんどの断層の調査は十分とは言い難く、早急な調査が望まれます。


原発の安全性をどう考えるか
 これまで、地震と地震の発生場所である活断層についてお話ししました。地震は地下に大きな圧力が加わり、岩石がそれに耐えきれなくなって破壊することによって生じます。この圧力は、日本列島下に沈み込むプレートによるものです。これは基本的には日本列島全体に加わっているため、どこで地震が発生しても不思議ではありません。このような状況にある日本列島は世界でも稀な場所であり、全ての原発は大きな地震の揺れに見舞われる危険性を持っています。
 もちろん一か所の原発に限れば、事故につながる確率はそれほど大きなものでないかもしれません。事故によって生じる損害は確率論の「期待値」で示すこともできます。例えば、1万円が当たる確率が千分の1のくじの場合、そのくじを買うことによって得られる収益(期待値)は1万円の千分の1で10円となります。原発事故では、大きな地震の揺れにより事故が発生する確率は小さいかもしれません。しかし、今回の福島の事故での損害額は、最終的にいくらになるか見当もつきません。いくら事故の確率が小さくても、両者を掛け合わせて得られた「期待値」は決して小さいとはいえません。
 原発再開を主張する人は、世界最高の原発安全基準を作るから大丈夫といいます。しかし原発の場合、事故による、日本だけでなく世界の人々に与えるもろもろの損害を考えると、前記の「期待値」の議論さえ意味がないともいえます。放射能という性格上、そもそも期待値があってはいけないのです。つい最近、福島第一の配電盤がネズミの侵入でショートし、冷却ができなくなる事故が発生しました。ネズミのため、普通の工場の操業が一時停止した場合は笑い話になるかもしれませんが、原発では核物質を取り扱う性格上、そうはならないのです。
 地震、津波などは、原発の安全性を考えるときの問題点のごく一部でしかありません。ウラン採取時の放射能汚染、稼働中の温排水、微弱とはいえ放射能の放出、核廃棄物の処理、保管等、入口から出口に至るまで多くの未解決問題を抱えています。さらに、事故による環境中への放射性物質の放出、10万年後の人類への核廃棄物のつけ回し等、まさしくドイツの倫理委員会が下したように、福島第一の事故後の原発運転再開は人倫にもとるものであり、少なくとも原発と人類は共存できないのです。



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