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連載 第14回
原発なくそう!
1万人原告「九州玄海訴訟」はじまる
〜ただいま原告6097人〜

執筆者

長谷川 照 Hasegawa Akira 経歴/早稲田大学卒、京都大学大学院修了... ≫詳細


はじめに

 福島で起きた東京電力の原発事故で、原発の安全神話は完全に崩れましたが、未だに福島の被害の実態は明らかになっていません。原発は、国策として国と九つの電力会社が一体となって推進されています。どの原発も国の決めた安全基準のもとで運転されていますから、玄海原発も福島原発と同様な災害を起こす可能性を否定できません。サイコロを振って1の目がでる確率は6分の1ですが、実際にサイコロを振って1の目がでれば1の目は現実のものとなります。その可能性が万一であろうと万々一であろうと事故が起こってしまえば、私たちの生命、健康、日常生活に甚大な被害を与えます。自宅があるのに2年経っても帰宅できない現実が原発災害の恐ろしさを示しています。
 原発の危険性は長期に亘って放射線を出し続ける放射性物質を扱うことから生じています。この放射性物質を外部に放出する又は漏えいすることは決して許されません。原発を稼働するために必要な全てのシステムの内に閉じ込めておかなければなりません。日本政府は、この危険性をひた隠しにして安全神話をふりまき、戦後の経済成長を急ぐあまり利潤の追求を優先して原発建設に邁進してきました。
 3・11福島原発災害(フクシマ)は、安全神話と安全神話を維持するために派生する様々な弊害が幾重にも積み重なって起こった災害です。そしてこの災害は異常に巨大な地震と津波による災害を超える破局的な災害となりました。原子力損害の賠償に関する法律の第二条五の2を見ると、「原子力損害とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう)により生じた損害をいう。」と定義されています。放射性物質の半減期は核種によって数十年から数十億年に亘るのですからフクシマはまだまだ続きます。


フクシマからはじまった「九州玄海原発訴訟」
 以下の文章は、九州の弁護士有志約30人が2011年7月から訴訟に向けて準備を重ね、9月28日、仮称「原発なくそう! 九州玄海訴訟」準備会を結成する際に原告を募集した呼びかけの文章です。  


 東京電力福島第一原子力発電所の事故は、未曾有の 放射能汚染を引き起こし、原発周辺地域における住民の歴史と文化、生活を奪い去り、日本列島や周辺国の人々や環境に対しても深刻な犠牲を強いています。事故発生から6カ月が経過した今なお収束の見通しも立っていません。
 3月11日以後の経過は、原発事故が地震や津波のような天災ではなく人災にほかならないこと、原子力発電システムの「安全神話」は虚構であり人々が安全かつ平穏に生活する権利を蹂躙するものであること、原子力エネルギーを技術的にコントロールできるという考えは「幻想」であり、原子力エネルギーは「荒廃と犠牲」そして破局への途であることを教えてくれました。
 ところが人災としての原発事故の徹底した原因究明や、多数の原発を立地してきた国や電力会社の責任を解明する作業も行わないままに、原発の再稼働を進める動きが始まっています。しかし、地震列島日本に原発は危険すぎます。日本にある全ての原発を廃止して、再生可能なエネルギーにより安全で安心して暮らせる社会を子孫に残すことは私たちの責任だと思います。
 私たちは、全国で始まっている『原発0』をめざす運動と連帯し、その一環として、最初に私たちの地元に立地している『玄海原発』を廃止する裁判に取り組みます。裁判では「安全神話」を振りかざして人倫に反する原発政策を推進してきた国と電力会社等の責任を徹底的に解明したいと考えています。


-出陣!- (「原発なくそう!九州玄海訴訟」NEWS Vol.1 2012.July より)



 事故発生から2年が経過した今、福島第一原発事故は収束どころか未だに放射性物質の放出を止めることさえ困難をきわめています。原子力規制員会が福島第一原発を特定原子力施設(注1)として溶融した燃料の取り出し、原子炉格納容器の止水、廃炉に向けて講ずべき事項を指示し東京電力に回答を求めたのは2012年の11月です。そして東京電力からの回答についての審議は2013年の3月に行われています。政府は放射能汚染の拡がるさまを2年間放置していたのです。
 他方、放射能の除染は遅々として進みません。原発周辺の11市町村は、国が直轄して除染し、年間1ミリシーベルト以下になれば帰宅できるのですが、本格的に始まったのは4市町村だけです。国直轄地域を除く県全体の住宅の除染率は16%です。政府は「故郷に一刻も早く帰りたい」住民の願いを2年間無視してきたのです。
 また、同規制委員会は新たな安全基準の作成に専念していますが、国会、政府、民間などによる事故調査委員会が積み残した技術的な事故原因の究明に取り組んでいる様子は窺えません。事故原因の分からないまま作られる安全基準は犯罪的な安全神話といえるでしょう。


国と九州電力を訴える「民事訴訟」(注2)
 「原発を止める」「原発なくそう」というのは、数十年続いた国の原子力政策の変更を迫るものです。裁判所が国の基本政策に反する判決を自信を持って書くためには、最終的に国民の多数が支持する状況を作っていくことが重要です。そこで、私たちは圧倒的に多数の人々とともに原発裁判史上類をみない「原告1万人訴訟」を目指しています。裁判と市民運動を原告でつなぐ訴訟です。
 2012年1月31日に玄海原発の操業差し止めを求めて、私たち第一次提訴1704人の原告は国と九州電力を被告として佐賀地裁に民事訴訟裁判を提起しました。現在、第六次提訴(2013年4月12日)までの九州玄海訴訟の原告数は6097人です。原告の所在地は41都道府県に拡がり、原発訴訟史上最大数の原告人となっています。
 訴訟で求める結論は次の三つです。 ①被告九州電力は、玄海原発1号機から4号機の全ての操業を差し止めよ ②被告国は、玄海原発1号機から4号機の全ての操業を差し止めよ ③被告らは、原告ら各自に2011年3月11日から上記操業の差し止め実現まで1カ月1万円(精神的損害に対する慰謝料)を支払え
 私たち原告は、原発の存在自体が私たちの生存を脅かしていることを知り、日本の原発をなくすべく、憲法の保障する権利(注3)を行使する決意をしました。原発は国の関与が極めて大きく、電力会社だけ相手にしても原発のない安全な生活は実現できませんから、国をも被告として原発の操業差し止め訴訟としました。


真っ向衝突「原発廃炉と原発推進」(注4)

 私たち原告の訴えに対して、被告国は「国は玄海原発の操業主体ではなく、操業を止めさせるには行政権限を発動させなければならない。行政権限の発動を求めることは行政訴訟であるべきで民事訴訟では不適法である」と主張し、いわゆる門前払い判決を求めています。
 被告九州電力は、原発はエネルギーの安定供給・環境保全の要請・経済効率性の観点から必要性が高いとし、安全性については、「(原発の)設計から建設・運転に至る過程の各段階において講じられる安全確保対策においては、(国の)細かな規則によりその適切性が確認されている」と主張しています。九州電力は、原発の必要性については被告国の政策を主張しているだけであり、玄海原発が特に必要である理由は述べていません。また、玄海原発の安全性については全ての指示と確認を被告国に委ねて操業しています(第一回裁判)。
 福島第一原発事故は、事故以前から国策民営、地域支配、利潤追求、情報の隠ぺい、放射性物質の処理方策もないまま放出・漏えいする公害性など、必然的に被害をもたらす構造ができあがっていました。それらの歪んだ構造(加害の構造)が極限に達した結果、フクシマは起こったのです(第二回裁判原告の主張)。
 加害の構造によって生じる被害は多岐にわたります。その概観は、立地段階では原発マネーによって地域支配と民主主義の破壊が行われ、稼働が始まれば、自然環境中へ放射性物質や温排水が放出され、被曝労働が行われ、処理の方策もないままの核廃棄物が蓄積されます。そして、いったん事故が起きればどうなるか? フクシマがその途方もない災害を示しています。(第三回裁判)。
 第四回裁判以降、原告側は原発による被害をもっと詳しく主張することで、原発の安全とは何かを問い質していきます。裁判所の考え方を大きく転換させるためには大変な説得が必要でしょう。そのためには、傍聴席を埋め尽くす原告・支援者のみなさんの存在が不可欠です。そして1日も早く、原告数1万人になることが大きな力になります。


さいごに
 科学は、人間の幸せに奉仕し、自然と社会のより深い理解をすすめ、現在および将来の世代に豊かな生活と健康な自然環境を提供すべきものです(注5)。  
3・11福島原発災害は、人間の幸せとは何か、自然とどう向きあうのか、将来の世代のために必要なものは何か、根本から考え直すことを私たちに求めています。


●原告を募集しています。
お問い合わせは
「原発なくそう!九州玄海訴訟」原告・弁護団
TEL:0952・25・3121
   

「原発なくそう!九州玄海訴訟」NEWS Vol.1 2012.Julyより




脚注
1.災害が発生した状況に応じて適切な方法による管理が行われる原子力施設

2.東島浩幸 始まった九州玄海訴訟、原状と課題(木村朗編九州原発ゼロへ、48の視点、南方新社2013年)

3.人格権(憲法13条)及び生存権(憲法25条)

4.稲村蓉子 解説(「原発なくそう!九州玄海訴訟」NEWS、vol.3、2013年)

5.科学と科学的知識の利用に関する宣言の前文冒頭(世界科学会議、ユネスコ、1999年)

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