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連載 第12回
どうする?高レベル放射性廃棄物の処分

執筆者

村上 明 Murakami Akira 経歴/東京教育大学大学院物理単位修得退学... ≫詳細


もう一つのリスク

 福島原発事故から2年が経過し、私たちは原発に潜在するリスクの大きさを知りました。
 ところが、原発にはもう一つ大きなリスクがあります。それは、現在全国の原発に大量に保管されている使用済み核燃料から出て来る高レベル放射性廃棄物の処理・処分です。これは原発が即時停止されるかどうかにかかわらず私たちが必ず直面する問題ですが、その解決の見通しさえついていないのが現状です。
 今回は、この使用済み核燃料や高レベル放射性廃棄物の処理・処分の問題について考えてみましょう。


使用済み核燃料の何が問題なのか?

 原子力発電所では、原子炉の中でウラン核燃料を燃やすことにより電気を作り出します。燃やす前のウラン核燃料の中には、ウラン235が3~5%、ウラン238が97~95%含まれていますが、ウラン核燃料を燃やすとウラン235の核分裂連鎖反応により大量の核分裂生成物(セシウムやヨウ素など)が作られます。この核分裂生成物は放射性物質なので長期間にわたって放射線を出し続けます。
 こうして出来た核分裂生成物は、燃やした後のウラン核燃料(これを使用済み核燃料と呼びます)の中に閉じ込められて蓄積していきます。使用済み核燃料の中にはこの他に、核分裂はせずそのままの状態で残ったウラン235やウラン238、さらにウラン238の核反応により出来たプルトニウム239などが閉じ込められています。もちろんこれらも放射性物質です。こうして、使用済み核燃料の中には放射線を長期間出し続ける放射性物質が大量に閉じ込められています。使用済み核燃料に含まれる放射性物質とその割合を図1に示します。

図1 使用済み核燃料に含まれる放射性物質


 この使用済み核燃料の中のプルトニウム239、ウラン235、ウラン238は核燃料として使えるため、これを再度利用しようとする核燃料再処理計画(核燃料サイクル)があります。核燃料サイクルでは、使用済み核燃料はそこから発生する熱を冷やすために3〜5年の間原発敷地内の貯蔵プールに保管された後、青森県六ヶ所村にある核燃料再処理工場へ移されます。
 核燃料再処理工場に運ばれて来た使用済み核燃料は硝酸に溶かされて、核燃料として再利用できるプルトニウム239やウラン235,238は分離・回収されますが、核分裂生成物は再利用できないので、再処理の過程で高レベル放射性廃棄物として廃棄されます。回収されたウラン235やプルトニウム239は加工されてMOX燃料としてプルサーマル発電に利用される計画でした(図2参照)。
 現在、再処理を待つ使用済み核燃料の数はすでに全国の原発や再処理工場の貯蔵・保管能力の限界近くにまで達しています。
 また、当初は再処理で分離されたウラン238とプルトニウム239を高速増殖炉「もんじゅ」で燃やし、発電しながら核燃料であるプルトニウム239も作るという計画でした(図2参照)。高速増殖炉ではプルトニウムも核燃料として使用できるのです。しかし、再処理工場は事故続きでいまだに操業できる状態ではなく、高速増殖炉「もんじゅ」もトラブル続きで、現在、高速増殖炉は完全に実現不可能な状態です。

図2 核燃料サイクルと再処理工場


 核燃料サイクルはこのように深刻な問題を抱えていますが、それ以上に困難な問題は、再処理工場で出来た核分裂生成物をどのように処理するのか、まだ見通しが立っていないという事です。
 ウランやプルトニウムを分離した後に廃液の形で残った核分裂生成物はガラスとまぜて固められ(ガラス固化体と呼ばれます)ステンレス製の容器に詰められ高レベル放射性廃棄物として特別の処理をされることになっています。


高レベル放射性廃棄物の最終処分は?地層処分とは?

 現在日本では、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体は、発熱と放射能を弱めるため地上管理施設で30~50年冷却・保管し、その後、地層処分(地下300mより深いところに埋める:図3参照)して数万年以上人間から隔離して保管する方式を考えています。その放射能強度が、元の核燃料を作るのに必要なウラン鉱石と同程度のレベルに戻るには、数万年~10万年かかると考えられています。
 地層処分では、鋼鉄製の容器と粘土で取り囲まれたガラス固化体を地下300m以深に埋め、まわりの岩盤に守られた状態で十万年以上保管することになっています。放射能が容器の腐食やガラス固化体の溶融で漏れ出しても放射能を含んだ地下水が地上に出てくるのは数万年~数十万年後であるとされています。しかし、地層処分の安全性については、現時点では長期間(数万年)の管理、多重防護システムの信頼性、地下深部の地質構造、地殻変動、地下水の変動など多くの不確定要素があり、更なる研究が必要です。

図3 高レベル放射性廃棄物の地層処分




使用済み核燃料の処理方法は?再処理? 直接処分?

 現在世界では、使用済み核燃料の処理方法として、使用済み核燃料を再処理工場で「再処理」して出来たガラス固化体を処分するか、或いは使用済み核燃料を再処理せずにそのままの状態で容器に密封し地中に埋めて処分する「直接処分」かの二通りの方法が考えられています。
 日本では当初、ガラス固化体を法律で高レベル放射性廃棄物と定めていて地層処分をする計画でしたが、2012年から従来の方針を見直し、直接処分の研究開発も開始することになりました。フランスは再処理後、地層処分する計画ですがまだ最終処分場の候補地は決定していません。他方、アメリカ、スウェーデン、フィンランドなどでは、使用済み核燃料を再処理せずに直接それ自体を高レベル放射性廃棄物として処分する計画です。フィンランドでは、使用済み核燃料を地下400mに埋設する計画で、2020年ごろ操業を開始する予定です。米国は2048年までに最終処分を開始する計画です。
 再処理の問題点は、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体の長期間(数万年)管理という点だけではなく、再処理の過程で出て来る放射性物質(クリプトン85やトリチウムなど)が大気中や海へ放出される点もあります。
 直接処分にも問題はあります。直接処分では、半減期の長い放射性物質が使用済み核燃料のまま処分されるので、放射能の影響は再処理の場合よりも長く続きます。また、使用済み核燃料の処理方法の研究はまだそれほど進んでいないため、すぐに対応出来る状態ではありません。  


第3の方法日本学術会議提言の暫定保管方式

 2012年9月、日本学術会議は「高レベル放射性廃棄物処分について」と題する提言を原子力委員会に回答しました。それは、地震の多い日本では地層処分は安全とは言えず、地震による地下水の流れの変動などの不確定要素があるので、政府の従来の地層処分の方針を白紙に戻して見直すべきだというものでした。
 提言の一つ目は、最初の60年間は高レベル放射性廃棄物を人間の目の届く場所で管理し、その間により安全な貯蔵方法の開発とその賛否を国民的に議論するという暫定保管方式です。60年以降は、もし深い地層処分が選択されたとしても、方針変更に備え200年間は高レベル放射性廃棄物を回収できるようにする、すなわち、「回収可能な地層処分」とするというものです。
 提言の二つ目は、高レベル放射性廃棄物の総量管理で、廃棄出来る放射性廃棄物の総量の上限を確定しその増加分を抑制するというものです。
 暫定保管としたのは、現時点では高レベル放射性廃棄物の最終処分については科学的に解明できていないことが多く、安全性を確保するためには更なる研究の時間が必要なためです。


どの道を選ぶのか?

 使用済み核燃料の再処理および高レベル放射性廃棄物の最終処分について現在考えられているいくつかの方式には、それぞれ次に述べるように問題があります。
1.原発を直ちに止める場合は、核燃料サイクルは不要ですから使用済み核燃料は直接処分するのが相対的に安全性の高い方法です。ただしこの場合は、協定により再処理工場にある使用済核燃料を直ちにどこかに移さなければならないので新たな問題が発生します。また使用済核燃料の直接処分についてはまだ研究が進んでいません。したがって、学術会議提言の暫定保管方式が適切であると考えます。
2.原発をすぐには止めない場合には、使用済み核燃料を再処理するかしないかに応じて次の3通りの方式が考えられます。
2-1.再処理しない場合は使用済み核燃料をそのまま地層処分する(直接処分:フィンランド、アメリカ方式)。
2-2.再処理する場合はガラス固化体を地層処分する(フランス方式)。
2-3.再処理するしないに関わらず最終処分方式をすぐに決定せずにしばらくの間暫定保管する(学術会議方式)。
 まだ未解明の部分が多い最終処分については、人間の管理が届く範囲内に高レベル放射性廃棄物を保管し、常にその安全性を確認しながら最終的にその処分方法を決定するという暫定保管の方式が最も科学的なやり方だと私は考えます。 その他の方式として宇宙処分、地上施設による長期保管などがありますが、いずれも安全性に問題が多く実現は一層困難です。

図4 高レベル放射性廃棄物の処分はどうする?


 このように、私たちは長期間にわたりリスクを抱えて高レベル放射性廃棄物の処分問題を解決していかなくてはならないのです。
 これは私達一人ひとりの問題でもあります。  

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