logo
編集室:佐賀市若楠3−1−15
株式会社 西日本情報センター
電話:0952-33-3155
FAX:0952-33-3166


連載 第7回 原子力発電の仕組み

執筆者

末崎 幸生 Yukio Suezaki 経歴/九州大学物理科卒業。佐賀医科大学... ≫詳細


 原子力発電の仕組みは多岐にわたりますがこの記事では主に原子炉の構造、原理およびその問題点について述べます。

原子炉の構造

 原発の原理はしごく簡単で、水を沸かして水蒸気にし、その勢いでタービン(羽根車)を回して発電機につないで発電するのです。ただし原発では水を沸かすのに石炭や石油でなく原子核分裂を使うことはご存知の通りです。原子力発電所の主要部は原子炉建屋とタービン建屋から構成されていますが、原子炉建屋は放射能や放射線の放出からの防護などのために厚さ1メートルのコンクリートの壁でできています。しかし実際には昨年3月に福島第一原発の建屋に大きな損傷が生じ、この防護壁が意味をなさなかったのです。原子炉建屋の中には原子炉があります。原子炉にはいくつかの種類がありますがここでは沸騰水型軽水炉(BWR)、以後BWRと呼びます)と加圧水型軽水炉(PWR)(注1)を紹介しておきます。軽水とは普通の水のことです。
 ちなみに福島第一原発はBWR、玄海原発はPWRです。BWRは水を沸かして水蒸気にしてそれで直接タービンを回すものです。PWRは原子炉内の水を加圧すると100度以上でも液体の水のままで、温度をあげて大気圧の水に接して高温の水蒸気にしてそれでタービンを回すのです。順調な運転のときは放射能に直接は触れていない水蒸気がタービン建屋に入りますが、構造は複雑になります。
図1はBWRの概念図です。太い黒枠で囲まれたビン型の格納容器は厚さ3センチメートルの鋼鉄製で丈夫にできていますが、さらにその外に隙間を隔てて厚さ2メートルほどの防護壁で囲まれています。格納容器の中には圧力容器がありその中で核分裂を起こさせるのです。圧力容器は直径6メートル、高さ22メートルほどあり厚さ16センチメートルほどの強い特殊な鋼でできていて高圧高温に耐えられます。


図1



 圧力容器の中には長さ5メートルほどの燃料集合体が数百本が並べられています。図2は一本の燃料集合体を示しています。燃料集合体の中央には十字の形をした制御棒が貫通していて上下にスライドできるようになっています。中性子を吸収して核分裂を制御する制御棒はその断面が図2の下部に示してあります。燃料集合体は多くの燃料棒の集まりであり、燃料棒は図2の右に示したような燃料ペレットを充填した直径約1センチメートル余り、厚さ約1ミリメートルの燃料被覆管で保護されています。燃料ペレットはウランの酸化物を粉末状にして成型して炉内の想定される高温高圧に耐えられるようになっています。上述した中で赤で強調した5個のフレーズはそれぞれの段階で何らかの異常例えば圧力上昇や温度上昇などが起こったとき耐えられるよう作ってあることを示しています。このような構造を持った原子炉で発電を行うのですが、タービンを回すための水、それを再び冷却して復水する仕掛け、格納容器内の圧力の調整をする仕掛けがあり、いろんな異常事態に対処する冷却ポンプなどの電気的および機械的装置があります。
 故障や漏れの起こりやすい小さい管をたくさん使って、なぜ核燃料を小分けして薄い燃料被覆管に装填なければならないのでしょうか。残念ながらこれは熱交換器のもつ宿命です。表面を通しての熱伝達効率は接触面積に比例し壁の厚さに反比例するので、小さい管にして数を多くして表面積を大きくし被覆管を薄くしなければならないのです。自動車のエンジンの冷却機関であるラジエータが華奢で漏れやすいのも同じ原理のためですが、原子炉では熱源本体がそうなっていて、高温、振動やショックへの耐性に不安のある構造になっています。

図2



原発での核反応の仕組み

 天然のウラン鉱石にはウラン238が99%でウラン235は0.7%しか含まれていません。原発の燃料として使うにはウラン235の割合を3〜4%程度まで濃縮して核分裂を起こさせる必要があります。ウラン235はウラン238より熱中性子による核分裂を起こしやすいのです。気体を円筒容器に入れて高速回転させると軽いものが中心に集まるという性質を利用して、気化させたウランを超遠心分離機で回転させて両者を分離させます。質量の差は235と238とわずかですので何度もこれを繰り返して濃縮するのです。そしてウラン235が4%程度まで濃縮された混合ウランの酸化物をペレットに詰め込みます。ウラン235を核分裂させるために中性子を用います。   中性子を照射しますとウラン235はヨウ素131やセシウム137などに核分裂を起こしさらに中性子も放出します。放出された中性子はさらに別のウラン235の核分裂を起こします。この核分裂が持続するようになることを臨界と言います。このとき発生するエネルギーを利用して発電するのです。このエネルギーは通常の化学反応熱の100万倍以上です。従って冷却水の供給がなくなると莫大なエネルギーで炉心溶融を起こします。冷却水は中性子の減速材としての役割と放射線の防護機能も持っています。臨界とは持続的な安定ではなく中性子の供給を微妙に制御しなければならない不安定な状態です。いろんな核分裂と核反応が起こりますが、話題に上るいくつかの反応の概略は以下のように表されます。nは中性子を指し、左辺はウランに中性子が当たると矢印の右のような反応が起こることを意味します。
 セシウム137の半減期は30年で、ヨウ素131は中間反応体で半減期は8日、そしてプルトニウム239で半減期は2.4万年です。右辺の「...」は省略した複雑な他の反応や物質を示しています。ウラン235の濃縮が90%の場合は連鎖反応が一瞬で起こる原爆になります。
 中性子はウラン235だけを狙い撃ちできずに96%程度あるウラン238にもあたり、最終的にプルトニウム239という放射性元素を大量に発生させます。またプルトニウムはプルトニウム爆弾の材料にもなります。福島原発第4号炉は震災当時稼動していませんでしたが、このプルトニウム239など使用済み核燃料を付属したプールが一時貯蔵庫として使われていたことはご存知のとおりです。

図3



配管の巣と耐用年限
 図1はBWRを簡略化したものを示していますが、実際は燃料集合体を中心として、その冷却や制御に必要な非常に入り組んだジャングルのような配管の巣と呼ばれる主に水の配管の集合体です。人で言えば水は血液であり、配管は動脈と静脈に当たります。その中の圧力容器内の核分裂エネルギーの熱交換器は、前に述べたように非常に精密な設計になっているのが分かります。従来の燃料を用いるときはこれでベストだと思いますが、桁外れに大きなエネルギーを持つ放射性ウランが燃料であることがどこまで考慮されていたのかという疑問が生じます。
 他の配管の多くは水の熱交換器ですがやはり動的ストレス(地震など)に弱い構造になっていることは炉心と同様です。これらの配管の設計、管理、点検などは炉心から離れると共に重要性が減少するかのように緩やかになっているようです。実際、福島でも破損したり劣化したパイプについての問題が数年前から指摘されていましたが、対応は遅れて今回の震災に間に合いませんでした。
 燃料ペレットを包み込んだ燃料棒は核分裂によりウラン235が減りますので、2〜3年に一回は交換されます。原子炉自体は中性子を浴びて劣化するので寿命は36〜40年が限度であると言われています。劣化すると急激な力、例えば地震などの動的ストレスがかかると壊れやすくなります。直射日光に曝されたビニールなどが10年も過ぎると脆くなるのと似ています。例えば玄海原発1号機はすでに36年を経過していすが、九電はそのまま再稼動させたいと考えています。


おわりに
 原発はコストが安いと言われていますが、充分な安全対策と使用済み核燃料の廃棄事業を含めると非常に高価なものです。地震大国で活断層が多くあり、津波の押し寄せる海岸に乱立する日本の原発で、さらに劣化した原発を使い続けるのはまさに薄氷を踏むような綱渡りです。さらに前に述べたように大量のプルトニウム239が発生することが分かっていて、受け入れてくれる最終処理場の目途もつかないまま原発は突っ走ってきて、大飯原発をはじめ福島以外の原発の再稼動も急いでいます。今後の原発関係者の使命は原発継続ではなく、膨大な使用済み核燃料を処理していく一大事業のための技術開発ではないでしょうか。利益の出ないこの大仕事を東電はやりたくないでしょうが、国家プロジェクトとしてやり遂げて子孫のためにも原発を廃止しなければならないと思います。
 最後に全世界で数千発の核ミサイルを持ちながら、かろうじて広島長崎以来一発も戦争のために使わなかった人類の理性を信じ、ドイツに習い日本の原発にも同様の賢明な対応を期待しています。一般市民として我々にできることは節電ですが、いまどき我が家(二人家族)では電力容量が20アンペアでノークーラー生活です。時々ブレーカが落ちますが使いすぎとして戒めています。家内は30アンペアにしよう、オール電化にしようと声高に言っていましたが最近は黙りました。私たちは便利だが、あってもなくてもいいような電気製品に囲まれていませんか?

脚注
1. BWR;Boiling Water Reactor, PWR; Pressurised Water Reactor
2. ベータ崩壊(7月号参照)で放出される電子線をベータ線という。

[TOPへ]

特定商取引法に基づく表記プライバシーポリシー
Copyright (C) Nishinihon Information Center. All